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「民間か、教員か」で迷ったら? 就活と教採は両立できる? 教育に関わるキャリア選択の悩みに、キャリアアドバイザーが答える!

1 はじめに

この記事は、株式会社リクルートで新卒キャリアアドバイザーとして働いていらっしゃる佐藤光紘さんへの取材を記事化したものです。(取材は2021年7月実施、情報は2021年9月時点のものです)

この取材では、教育に関するキャリア選択をする際に不安に感じる様々なことについてお話を伺いました。「民間企業に勤めるか、教員になるか迷っている……」「ファーストキャリアでどちらを選択したらいいのか分からない……」「就職活動をしながら教採も受けたい……」など、教育に関するキャリア選択で悩んでいる方は、ぜひご一読ください。

2 キャリア選択について

民間企業と教員で迷ったときの、キャリア選択の軸って?

民間企業か教員かの二択は立てがちですが、そもそも、この二者択一は現実的でも、本質的でもありません。民間企業でもどの業種なのか、教員でも公立か私立か、など選択基準は様々です。そのため、自分の大切にすべき軸を基に就職先を具体的に決めるべきです

就職活動の軸といっても三者三様であるため一概には語れませんが、キャリアアドバイザーの仕事をするうえでは主に4つの観点を大切にしています。1つ目に、やりたいこと軸(英語で言うとwill)です。例えば、「子どもに関わっていきたい」といったものがこれにあたります。2つ目に、できること軸(英語で言うとcan)です。例えば、「絵を描くのが得意だから、デザイナーになりたい」というのがこれに該当します。3つ目に、環境軸(英語で言うとculture)です。「自由闊達な職場の雰囲気や環境が自分に合う」といったものはここに当てはまります。そして4つ目に、その他条件(英語で言うとmust)です。例えば、「親の介護の関係で親元を離れられないから、地元で就職しなければならない」などはここに入ります。

教員以外で人の成長に携わることのできる職業はあるの?

無数にあると思います。身近なところでいうと、民間の塾講師も子どもの学力向上や成長に携わることのできる仕事ですね。他にも、教育教材を開発・サービス提供をしている企業でも、子どもの生きる力や変化にアプローチできます。また、人材系企業においても、就職活動・転職活動の支援などを行う過程で、学生や転職希望者の成長を見守ることができます。更に、人生100年時代と言われる今、『学びなおし』にも注目が集まっています。そのため、社会人向けの研修や学習をサポートしている企業でも大人の成長に携わることができます。ここまでは民間企業の例をあげましたが、学習支援事業を扱うNPO法人や、教育委員会などの公的機関もあります。このように、人の成長に携わることができる職業は世の中に無数にあります。

公立教員と私立教員は何が違うの?

色々と違いがあると思いますが、分かりやすいところで言うと待遇・設備・自由度でしょう。公立は地方自治体の管轄なので、進学校であるか否かや、地域性が学校ごとに異なるだけでなく、どのような学校に配属されるか分かりません。その点、私立は自分自身の価値観点・やりたいことに合わせて学校を選択できます。ただ、私立は一校一校探して試験を受ける必要があるので、公立で教員採用試験を受けるよりも手間が多いかもしれません。

子どもに与える影響力は教員と民間企業で違いはあるの?

教員の場合、担任であれば受け持ちの生徒、教科担任であれば授業を受け持った目の前の子どもたちや、その先の親御さんにダイレクトに影響を与えることができます。

民間企業といっても上述のように、様々な取り組みを行う企業があるため、一概には言えませんが、その企業が行う商品サービスの対象としているお客様に幅広く影響を与えることができるでしょう。例えば、小中高生向けの教材開発を行う企業であれば、不特定多数の子どもたちに学ぶ楽しさを伝えられた理、学力向上にアプローチできるかと思います。このように、民間企業は教員よりも間接的かもしれませんが、幅広い地域や多くの人に影響を与えられることもあります。しかし、社会を変えるための1人の影響力は限られています。そのため、社会に与える影響力の大きさだけではなく、「自分が社会にどのような影響を与えたときにやりがいを感じられるのか」を考えてキャリア選択をするとよいでしょう

公務員である公立教員は安定しているの?

あなたにとって”安定とは何か”。それ次第で、答えが変わってくるかと思います。「職を失うことがないこと」が安定なのだとすれば教員は安定だと思います。役割は変化していくかもしれませんが、教員自体は無くてはならない仕事なのでなくならないでしょう。しかし、「何にも縛られず自分の好きなように働くこと≒どこにいっても通用するような力を付けて働くこと」が安定と捉えるのであれば、教員は安定とは言い切れないかもしれません。公務員、教員が別の職業に転職することはなかなか難しいので、自由に働いていけるかという観点では安定しているとは言い難いです。

非常勤講師として勤めながら民間企業に就職することは可能?

かなり不可能に近いのではないでしょうか。民間企業は勤務時間が決まっている場合が多いので、働くとすれば授業と時間が被ってしまうでしょうし、現実的ではないと思います。しかし、アルバイトのような形や、非常勤講師と契約社員なら両立も可能かもしれません。また、柔軟性のある企業であれば、週2コマなどで私立で特別講師をしている方もいます。

3 就職活動と教職の両立について

就職活動と教員採用試験の勉強って両立できるの?

できます。ただ、それぞれの時期が重なることも多いので、計画的に進める必要があるでしょう。就職活動が本格的に解禁されるのは大学3年生の3月で、4月から6月がピークになることが多いです。一方で、教員採用試験自体の時期は就職活動よりも遅めですが、教育実習は基本的に5月から6月になることが多いです。そのため、両立する場合は、就職活動真っ只中に教育実習で2週間から3週間の期間を空けるうえに、教員採用試験の勉強をしなければならないことになります。ですから、保険として民間企業からの内定を1社もらったうえで、教員採用試験に挑むなど、計画的に進めることができないと、どっちつかずでよい結果につながらないでしょう。

留意していただきたいのが、民間企業は新卒採用に本気であるということです。企業の立場からすると、教員になる可能性が高い学生は採用するリスクが高いと言えます。そのため、教員採用試験を受けることに了承してもらったうえで内定をもらうことは厳しいという実情があります。ですから、自分の理想通りの両立をしながら進める難しさもあると思います。

教育実習と就職活動の両立ってできるの?

可能ですが、難しいと思います。就職活動が本格化する大学3年生の3月より前に採用・内定を出す、外資系企業やベンチャー企業等もありますが、全体としてはそこまで多くありません。さらに、教育実習も慣れないことの連続のなかで、教育実習後に民間企業の面接を受けるのは現実的ではないでしょう。そのため、就職活動が教育実習と重なるだけでなく、2週間から3週間は就職活動の企業選考を進めることができません。ですから、教育実習に行く場合はそれなりの覚悟と準備が必要になってくるでしょう。

教員免許が民間企業の就職に有利になることはあるの?

悲しいことに、ほとんどありません。なぜなら、日本では、転職は資格やスキルを重視する一方で、新卒はポテンシャル採用といって人柄を重視することが多いからです。そのため、教員免許を持っていること自体が新卒での就職に有利になることはほとんどありません。その一方で、教員免許を取得するまでの過程で頑張ったことなど、人柄の伝わるソフト面は企業側に評価してもらえる可能性があるでしょう。

4 転職について

ファーストキャリアの職業選択で考えておいた方がいいことって?

2点あると考えます。1点目に、『複合的な視点で考える』ということです。例えば、盲目的に「私はとにかく教員になりたい!」、「社員の人柄がいいからこの企業以外考えられない!」と考える人の中には、もちろん幸せな人もいますが、後悔をするリスクの方が高いと思います。このように、『やりたいこと軸』だけで考えてしまうと、実は自分の得意なことではなかったり、環境が合わなかったりすることもあります。そのため、単一の軸で考えるのではなく、総合的に考えて選択する必要があると思います。

2点目に『長い時間軸で考える』ということです。未来の話になるためなかなか想像しにくいかもしれませんが、現在大事なことが将来的にも大事であるとは限りません。例えば、オリンピックの中継を見て「アスリートを支える仕事がしたい」と考えるのはオリンピックが行われている期間だけの可能性がありますよね。ただ、小さい頃からスポーツをやってきて、スポーツの現場に携わるときに自分は一番エネルギーが湧く、という経験があれば、おそらく将来的にもスポーツに携わることが楽しいという可能性が高いでしょう。このように、未来の自分を考える際に、現在だけでなく過去の自分を振り返ってやりがいを感じたことを探してみるのが大切です。

民間企業から教員への転職は、何年目がベスト?

一概には言えませんが、新卒で就職して10年以内がよいと思います。年齢が上がると体力的にも、精神的にも、家庭などの環境的にも、転職のハードルが高まるのが現実です。例えば、子どもと関わる機会の少ない民間企業に勤めてから教員になることを考えた場合、求められるスキルが全く異なります。民間企業に10年以上勤めると、その企業のやり方が身についているので、転職の際に学校現場のやり方を一から覚えて適応するのは、なかなか大変なのではないかと思います。その点、10年以内の若手のうちであれば、比較的体力もありますし、その企業に適応しきっていないという点で精神的にも転職がしやすいと思います。なので、10年以内であれば、好きなタイミングで教員への転職を考えてよいと思います。

「教員から民間企業」と「民間企業から教員」はどちらが難しい?

教員から民間企業に行く方が圧倒的に難しいです。教員の立場ではないため、偉そうなことは言えませんが、教員になった後に活躍できるかどうかという話は別として、教員は採用試験に合格すれば就くことができる職業であり、ある程度保障されている側面があるのは事実です。その反面、教員の転職は想像以上に難しいのが現状です。実際に、私が勤めている会社の転職部門においても、民間企業から教員への転職が成功する割合と、教員から民間企業への転職が成功する割合には大きな差があります。その理由として、転職は即戦力を求めたスキルマッチングだということが挙げられます。民間企業に転職する際に「教員で培ったスキルはどのように活かせるのか」ということを話すのは、なかなか難しいことだと思います。顧客も違えば、用いる仕事のツールやスタイルも違いますし、そもそも成果を求められるかどうかという点でも違いがあります。そのため、即戦力を採用する企業側としては、考え方や求められるスキルの異なる教員だった人よりも、企業に勤めていた人を採用しようとする力学が働くわけです。

5 「民間か、教員か」で迷っている学生に向けて

冒頭の話と重複しますが、「民間か、教員か」という分かりやすい問いから脱却したほうがよいと思います。教育や子どもに携わるためのアプローチは多種多様です。だからこそ、自分自身に「何を大事にしたいのか?」「何がしたいのか?」を問いかけたうえで、教育に関わる幅広いキャリアから絞るとよいと思います。

とはいえ、キャリアに関して何か行動しないとそもそも選択肢を考えることができないことも事実です。そのため、自分が本当にやりたいことや大事にしたいことを言語化するのと並行して、自分のキャリアに対しての選択肢を知るための行動をすることも大切です。

6 プロフィール

佐藤光紘さん

株式会社リクルートキャリア 新卒エージェント 関西キャリアアドバイザーリーダー

1994年北海道札幌市生まれ。京都大学法学部卒。大学在学中には、知的障がい者支援サークルや教育系NPO、就活支援団体等の活動に打ち込む。

2017年、株式会社リクルートに新卒入社。以来キャリアアドバイザーとして、西日本の学生を中心に約2000人の学生の就活支援を行う。現在は、新卒エージェント関西支社のキャリアアドバイザーリーダーとして、チーム・各種プロジェクトマネジメント業務にも従事。(2021年7月現在)

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8 編集後記

今回インタビューをしてみて、教職や教育に関わる仕事に就くと決める際の軸がどのようなものか知ることができました。そして民間企業と教員の2択に縛られず、自分が将来どのようなことをやりたいのかを軸に将来の職業について考えていきたいと思えるきっかけになりました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安藝航、武村愛雛)

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