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教育学を学ぶためのヒント!【教育心理~ひとつの学習方法が複数教科で役立つ】(初学者向け)

1 はじめに

「教育学を学びたいけれど、自分が知っている言葉で検索しても得たい情報にたどり着けない。調べるために必要な専門用語を知らない」という学生の方は多いのではないでしょうか。

そのような学生の方が自分で教育学を学べるようになるために、この記事では教育学のキーワード等を分かりやすく説明しています。

今回は、学習の転移、その中でも特に学習方法の転移(学習の構えの形成)について取り上げます。

2 学習の転移:学習方法や学習内容が他の教科・科目等の学習に影響を及ぼす

学習の転移の例:

▷英単語を繰り返し書いたら効率よく覚えられることに気づいた。その後、古文単語も繰り返し書いて覚えようとする。

▷英語のタイピングを練習すると、ローマ字のタイピング技術をあまり苦労せずに習得することができるようになる。

上記の例のように、ある学習をしたことが別の学習をするときにプラスの影響を及ぼすことを正の転移といいます。反対に、マイナスの影響を及ぼすことを負の転移といいます。

つまり、学習の転移とは、ある学習をしたことが別の学習をするときに影響を及ぼすことです。

ここからは、①学習方法の獲得によって生じる転移(学習の構えの形成)と、②学習内容の共通性によって生じる転移に分けて説明します。

①学習方法の獲得によって生じる転移(学習の構えの形成)

▷英単語を繰り返し書いたら効率よく覚えられることに気づいた。その後、古文単語も繰り返し書いて覚えようとする。

上記の例では、繰り返し書く、という英単語の学習方法を獲得したことが、古文単語の学習方法の選択に繋がっています

このように、獲得した学習方法が別の学習でも使えるようになることを学習の構え(学習セット)の形成といいます。これはアメリカの実験心理学者ハーロウが提唱したものです。

※3章では、学習の構え(学習セット)の形成に関する事例研究を紹介しています。

②学習内容の共通性によって生じる転移

▷英語のタイピングを練習すると、ローマ字のタイピング技術をあまり苦労せずに習得することができるようになる。

上記の例では、英語のタイピング練習とローマ字のタイミング練習に、入力したいアルファベットに対応するキーを押す、という共通の学習内容が含まれています。こうした学習内容の共通性によって転移が生じやすくなります。

3 学習の構え(学習セット)の形成に関する事例研究

上阪友理が行った、学習の構え(学習セット)の形成に関する事例研究(2010)(参考②)を紹介します。

この研究では、教訓帰納[*1]に焦点を当てた認知カウンセリング[*2]での指導を通じて学習の構えが形成されていきます。

[*1] 教訓帰納:この問題をやってみたことによって何が分かったかを教訓として引き出すという学習方略のこと(参考②)

[*2] 認知カウンセリング:認知的な問題をかかえている人(主として、「何々がわからなくて困っている」という不適応感をもった人)に対し、個人的な面接によって原因を探り、解決のための援助を与えるもの(参考①)

<認知カウンセリングによる指導前の子ども>

クライエントの子どもは、失敗が自らの向上のために役立つとは考えず、勉強量だけを重視していました。このような学習観が「多くの問題を解きはするが振り返らない」というクライエントの学習方法に影響を与えていました。

<認知カウンセリングでの指導による学習の構えの形成>

クライエントは教訓帰納によって学習成果が出たことを実感し、学習方法を工夫するという学習観を持つようになります。このような学習観の変容により、ひとつの教科における学習方法を獲得するだけでなく、他の教科の学習方法も工夫することに繋がっています

参考:上阪友理、2010、「学習方略は教科間でいかに転移するか——「教訓帰納」の自発的な利用を促す事例研究から——」、『教育心理学研究』、58巻1号、80-94、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/58/1/58_1_80/_pdf/-char/ja(2021年9月27日アクセス)。

4 関連記事

こちらの記事では、国文法と英文法の共通性から考えられる国語と英語の教科連携について紹介されています。学習内容の共通性による転移についてさらに知りたい方はぜひご一読ください。

英語からとりくむ国語との教科連携

5 参考

①市川伸一、1989、「認知カウンセリングの構想と展開」、『心理学評論』、Vol.32 No.4、421-437、https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/32/4/32_421/_pdf/-char/ja(2021年9月27日アクセス)。

②上阪友理、2010、「学習方略は教科間でいかに転移するか——「教訓帰納」の自発的な利用を促す事例研究から——」、『教育心理学研究』、58巻1号、80-94、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/58/1/58_1_80/_pdf/-char/ja(2021年9月27日アクセス)。

③白水始、2012、「認知科学と学習科学における知識の転移」、『人工知能学会誌』、27巻7号、347-358、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/27/4/27_347/_pdf/-char/ja(2021年9月27日アクセス)。

④羽生義正、1999、『パースペクティブ学習心理学』、北大路書房。

⑤東京アカデミー、2019、『教員採用試験対策 参考書 教職教養Ⅱ [教育心理・教育法規]』、七賢出版。

6 編集後記

今回は、教育心理学の中の学習の転移について取り上げました。本記事で紹介したキーワード等が教育学を学ぶための足がかりとなれば幸いです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 小林)

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