教員インタビュー 第1弾 (Sさん・高等学校・英語科)

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目次

1 はじめに

今回は公立高校で英語科教員をしているSさんにお話を伺いました。教員になったあとの具体的なイメージが掴める内容となっています。また、教員の立場から大学時代にしておくべきことについてもアドバイスをいただいています。ぜひご覧ください。

2 業務内容について

日々の具体的な業務内容

教員の業務は授業・授業準備・生徒、保護者対応・校務分掌・部活動指導・学級運営といった一般的に想起されるものがあります。それに加えて学校特有の課外授業(朝・放課後の補講)とその準備という業務もあります。校務分掌については、私の担当する業務として朝の門立ちなどがあります。

また担任を持つと、たとえば3年生では出願のためのサポートや面接指導といった進路関係の業務のように、担当学年特有の業務が加わり、より忙しくなります。

業務の中で負担になっているもの

課外授業と門立ちです。朝課外は7:35に始まるので、教員はその時間より前に学校に来ていなければなりません。また門立ちでは朝、校門に立ち、登校して来る生徒に挨拶指導をします。若手の教員は早めに来たほうが良いという風潮もあり、1年目のときは毎日6:30には出勤していたため、それがとても負担でした。

労働時間

8:35に職員朝礼をし、8:40に始業。終業は17:00が基本となっています。しかし、朝課外や門立ちがある日は、それより早く出勤することになります。また、放課後の時間は部活指導や生徒の質問対応をしたり、翌日以降の授業準備をしたりするため、終業も19:00、20:00になることがほとんどです。部活動で忙しい教員は授業準備に手が回らず21:00、22:00まで残っていることもあります。

3 部活動について

部活動における業務内容

昨年度は女子バレーボール部の担当でした。私は、バレーボールは未経験のため、技術指導はあまりできませんでしたが、メンタル面での指導をしたり、部の運営において他の学校に試合の交渉をしたりしていました。

今年度は生徒会を担当しており、学校行事全体の運営に関わる生徒会の生徒たちをサポートしています。

部活動において負担になっていること

女子バレーボール部では、私は未経験で技術指導ができませんでした。精神論ももちろん大切ではありますが、部活動の顧問として信頼を得るために、技術指導力は欠かせないピースだと考えているため、このことには頭を抱えていました。その他には、男性教員と女子生徒の距離の詰め方など、女子の部活ならではの難しさもありました。

生徒会に関しては行事前後の負担が非常に大きくなります。そのため、その時期には授業準備との両立が困難で、残業が続いてしまいます。

担当する部活動の決定方法

主幹の会議で決まります。今までの部活指導の経験や専門にしている種目などを考慮して顧問を決めている部活動もありますし、副顧問や人手の少ない部活動の顧問は毎年変わります。一応アンケートは取られますが、あくまでも希望という感じで、希望通りにはいかないことも多いです。

4 授業について

担当している授業のコマ数

一週間に18コマ、2・3年生の英語を担当しています。週に18コマは教員の中でも比較的多い方だと思います。

授業準備の方法

授業で使うパワーポイントの作成がメインとなります。こだわるときりがないため、1授業30分で終わらせたいと思ってはいますが、納得がいかず1時間を超えることも多々あります。

また授業する箇所で理解の甘いところがあれば学び直し、生徒にわかりやすく伝えられるように準備します。学び直しは時間もかかりますが、自分の成長を実感でき、非常に楽しんでいます。

このような授業準備は先輩教員の様子を参考にすることもありますが、基本的には自分で試行錯誤して改良していく形です。

授業スキルの習得方法

1年目に初任者研修で指導教員に指導してもらうことができます。授業後のフィードバックで、説明の仕方や生徒に伝えるべき内容を教えてもらえるので、それを参考に授業を改良していました。あとは規範から外れない程度に自分なりに試行錯誤しながら、自分のやりたい授業を追求していきます。

5 教員の仕事について感じること

教員の仕事のやりがい

生き生きとした生徒たちと日々関われる点が一番のやりがいだと思います。私は生徒と関わる中で、生徒の根底には「何かしらやってみたい」という強い意欲があることを学びました。そのような意欲を殺したくないですし、生徒の様子を見ていると、もっと生徒が成長できるようにサポートしたいという思いが強くなります。

また、生徒が質問や相談に来てくれた時は、自分が頼られていることを実感できる非常にうれしい瞬間です。このような時間があると、「どんなに忙しくても力になってあげたい」という意欲が沸々と湧いてきます。このように生徒と接する毎日は、刺激もあり非常に楽しいと思います。

教員をやっていて良かったと思ったエピソード

昨年度顧問をしていた女子バレーボール部では新型コロナウイルスの影響で、最後の大会が中止になってしまいました。チームとしては良い雰囲気で活動しており、最後の大会に向けて「本気で頑張ろう」と火がついている最中に中止が決まりました。

そのような不本意な形での引退となってしまった3年生でしたが、引退前最後の練習の際、「1年間ご指導ありがとうございました」と私の元に言いに来てくれました。経験のない部活ということもあり、ほとんど何もできなかったと自分では思っていましたが、このように言ってもらえたことで認めてもらえたような気持ちになり、胸が熱くなりました。

教員として大変だと感じていること

忙しい時期になると、業務がかさみ生徒と向き合える時間が少なくなってしまう点です。「自分の業務をこなすこと」と「生徒としっかり向き合うこと」の両立が難しいと感じています。

また、生徒に叱ることの難しさを感じています。叱ることは当然うれしいことではないですが、教員としてしなければいけないことです。「生徒がこうあってほしい」という軸を自分の中で持ち、それに基づいて指導ができないと教員としてもブレが生じてしまいます。生徒のためを思い、時には心を鬼にして叱ることの大切さを感じながらも、うまくいかない点が難しいところです。

6 大学生に向けて

教員の仕事について、大学時代のイメージとの違い

大学時代はボランティアでの経験を通して、生徒と仲良く話すことに楽しさややりがいを見出していました。しかし、実際教員になると、当然叱るべき場面もあり、仲良くしていればよいというわけではありません。このような生徒指導という面においては、大学時代にイメージがしにくかった点だと思います。

また、自分の業務に向き合わなければならない時間も多く、生徒と会話する時間は想像以上に少なかったです。放課後に質問に来てくれる生徒や、部活動で関わる生徒以外と深く話せる時間は非常に限られており、大学までのイメージとは大きく異なりました。

仕事内容で言うと、特に教員間での働き方はイメージしていませんでした。教員同士の細かな連絡、報告、根回しが仕事を円滑に進める上で非常に大切だと、教員になってから気付きました。

大学時代にやったほうが良いと思うこと

パソコンの基礎技能を習得しておくと非常に役に立ちます。最低限タイピングの技術があるだけで、書類作成のスピードは格段に上がり、自分の仕事が非常に楽になるからです。私は大学時代、普段からパソコンによる打ち込みをしていたため身につけることができました。みなさんも普段からパソコンを扱う習慣を作っておくと良いと思います。また意欲のある方はセミナーを受講したり、資格を取ったりするなどより本格的に学んでおくのもおすすめです。

これに加えて教科の専門性を養っておく必要があると思います。私の例で言うと、教員になるまでは、英語を感覚で読めればいいという考え方をしていましたが、感覚では生徒に伝わらないため、体系立てて理解する必要があります。そのための基礎として文法が必要であり、教員になってから学び直しをしました。このような勉強を大学時代にしておけると、自分の仕事を減らすという面でも非常に役に立つと思います。

教員を目指す大学生に求められている力

教科の力をつけるのはもちろんですが、それに加えて「学びの専門家」としての地盤を築いておく必要があると考えています。私は大学時代に『学びの専門家としての教師』(岩波講座 教育 変革への展望 第4巻 2016年 岩波書店)という本に出会い、その内容に深く共感しました。

教師は「教科の専門家」であることは事実ですが、その分野の専門家は各所にたくさんおり、そこには及び得ないのではないかと思います。そこで教員が一番秀でているのはどういう点なのかと考えたときに、私は学びの過程やプロセスを詳しく知っていることであると思いました。たとえば英語科の場合、英語の能力を養うことはもちろんだが、英語の学び方や、興味のある分野についての学びをどのように進めていけば良いかを知っており、それを生徒に伝えられることが大切だと思っています。

このような教員のあり方を考えると、大学時代の過ごし方として興味のある分野にどんどん迫ってみたり、勉強の仕方を丁寧に理解し直したりすることが必要だと思います。

教員を目指す学生へのメッセージ

教員は感情が豊かな時期の、生き生きとした生徒たちと直接かかわれる魅力的な仕事です。しかし生徒と関わるということは、その分責任も伴います。忙しい中でも進化し続けることのできる「学びの専門家」としての地盤を、学生の時期にしっかり養ってほしいと思います。

7 関連記事

以下は、今回取材させていただいたSさんの教採体験談に関する記事です。併せてぜひご覧ください。

教採体験談インタビュー 第1弾(Sさん・高等学校)その1

教採体験談インタビュー 第1弾(Sさん・高等学校)その2

8 編集後記

教員の仕事は大変なことも多いですが、その分生徒たちの成長を間近で見られるという何物にも代えがたいやりがいがあるのだと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 井上)

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