フェイクニュースを見極める方法(IFLA)&メディアリテラシークイズ

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目次

1 フェイクニュースを見極める自信はありますか?

今年2020年の春には、「トイレットペーパーが売り切れる」というデマに惑わされ、実際にお店からトイレットペーパーが消えるという光景が日本中で見られました。フェイクニュースはもはや他人事ではなくなっており、その見極め方を子どもたちに伝えることはいっそう重要になるでしょう。

この記事では、国際図書館連盟(IFLA)が紹介しているフェイクニュースを見極めるための方法と、それに基づくいくつかのメディアリテラシークイズをご紹介します。授業や子どもたちとの話のネタにぜひお使いいただければと思います。

2 フェイクニュースを見極める方法

2020年4月16日、国際図書館連盟(IFLA)はインフォグラフィック「フェイクニュースの見極め方」を改訂し、公表しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進む中でも誤った情報の氾濫に惑わされないよう、フェイクニュースを見極めるための8つのポイントが示されています。

このインフォグラフィックは各種言語に翻訳されており、日本語版についてはYasuyo Inoue氏によって翻訳されたものがサイトに掲載されています。

  • 情報源を検討しよう
  • さらにもっと読もう
  • 情報源は裏付けられている?
  • ほかも納得している?
  • これってジョークかも?
  • 自分自身の先入観をチェックしよう
  • 専門家に訊いてみよう
  • 拡散する前によく見てね

※IFLAサイトより引用<https://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/info-society/how_to_spot_fake_news_covid-19_jp.pdf>[引用日:2020/7/30]

ここでは日本語版をもとに、簡単に解説を加えていきます。

 1 情報源を検討しよう

その情報を発信しているのは誰でしょうか。公的機関なのか、専門家なのか、アマチュアの一般人なのか。情報の内容だけでなく、誰が発した情報であるのかに留意することが必要です。

 2 さらにもっと読もう

とくにインターネットニュースの見出しは、限られた文字数でニュースを魅力的に伝え、クリックさせるために設定されています。ときには誇張されていることもあるかもしれません。見出しだけでなくニュースを最後のほうまで読み、記事全体の内容を把握することが大切です。

 3 情報源は裏付けられている?

そのニュースの情報は、どのような根拠に基づいて発信されているのでしょうか。公式な発表があったのか、噂レベルなのか。ニュースそのものを読むだけでなく、信頼できる根拠が示されているかどうかにも気を配るのがよいでしょう。

 4 ほかも納得している?

ある一つの媒体からニュースを得るのではなく、複数の媒体で比較してニュースを得るのがよいでしょう。同じニュースでも、媒体によって切り口や伝え方、根拠とする情報などが異なり、まったく違うニュースのように読めるかもしれません。

 5 これってジョークかも?

あまりに奇妙なニュースであれば、それは事実ではなく冗談かもしれませんね。

 6 自分自身の先入観をチェックしよう

たとえば「プロ野球のAチームがBチームに勝利した」というニュースを読んでも、その人がどのチームのファンであるかによって受け取り方は違うでしょう。情報を受け取るときには、自分自身の先入観が入っていないか注意することが求められます。

 7 専門家に訊いてみよう

ニュースがほんとうかどうかわからないなと思ったら、図書館司書のような情報の専門家に尋ねてみたり、WHOなどの公式の情報源を調べてみたりするのがよいでしょう。

 8 拡散する前によく見てね

SNS等で出会った情報を安易に拡散せず、その情報が正しいかどうかを考えてから拡散することが大事ですね。

3 フェイクニュースを見極めよう! メディアリテラシークイズ

ここからは、IFLAによる「フェイクニュースの見極め方」を参考に、筆者が作成したメディアリテラシークイズを3問掲載します。簡単なクイズですが、意外と見落としがちな視点を含んでいるかもしれません。頭の体操と思ってぜひご覧ください。

 □ フェイクニュースを見極めるクイズ①

1月のある日、Aさんがインターネットでニュースを読んでいると「1月の積雪量 昨年比2倍の予想」との見出しが目に飛び込んできました。昨年の2倍も雪が降るだなんて、おそろしい話です。明日も大雪だと言うけれど、どのくらい降るのだろう。電車は動くだろうか。何か大きな事故が起きるのではないだろうか。Aさんは怖くなってしまいました。

ここでクイズです。Aさんは、メディアの情報を正しく読み取るためにどのような行動をすべきでしょうか。

* * *

答えは、「さらにもっと読む」ことです。

見出しはニュースの内容を端的に、かつ魅力的に伝えるものです。見出しに使える文字数は限られているため、それはときに誇張された表現になることもあります。したがって、見出しだけを読んで判断せず、ニュースの最後まで読んでから判断することが、フェイクニュースを見極めるために重要です。

今回のケースであれば、見出しにある「今年の積雪量は昨年の倍」から判断できる情報はそれほど多くありません。もしかしたら今年の積雪量が多いのではなくて昨年の積雪量が少ないというだけで、今年の積雪は平年並みだなんて可能性もあります。見出しだけに左右されず、ニュースを「さらにもっと読む」ことが大切です。

 □ フェイクニュースを見極めるクイズ②

日本に強い寒波が到来した朝、関東に住むBさんはインターネットでニュースを読んでいました。Bさんの家にはテレビや新聞もありましたが、寒いので布団にくるまってスマートフォンを眺めていたのです。そこで「関西地方で30cmの積雪」というニュースを読んだBさんは、雪が降ったのは関西だけだったのだなと思い、自分には関係なかったと安心しました。

ここでクイズです。Bさんはメディアの情報に惑わされないためにどのような行動をするべきでしょうか。

* * *

答えは「ほかは納得しているか」確認することです。

ニュースを読むとき、一つの媒体だけではなく複数の媒体を比較して情報を得ることは有効です。ある一つの媒体にしか載っていない情報は、もしかしたら誤った情報かもしれません。

今回のケースでは、ネットニュースには確かに「関西で雪」と報じられていますが、テレビや新聞などほかの媒体を見ると「関東・都内で雪」と報じられているのみです。この場合は、ネットニュースの「関西」という表記が誤りである可能性を思い浮かべねばならないでしょう。

 □ フェイクニュースを見極めるクイズ③

関東で大雪が積もった朝、都心に住むCさんはSNSを見ていました。すると友だちが「地下鉄が止まっている」と投稿しているのを発見。地下鉄が止まったのならば大変だ、もし知らない人が駅に行ってしまったら困るだろう、早くほかの人にも教えてあげなければ! Cさんはすぐにその投稿をシェアしようと思いつきました。

ここでクイズです。フェイクニュースを防ぐため、Cさんにはどのような行動が求められるでしょうか。

* * *

答えは「拡散する前によく見る」ことです。

信頼できる情報源かどうかをよく確かめ、情報が正しい可能性が高いと判断したときのみ、投稿をシェアするのがよいでしょう。

今回は公式の地下鉄運行情報を見ると、地下鉄の運転見合わせの情報は発表されていません。地下鉄が止まっているという情報は誤りである可能性が高いため、安易にシェアすることは控えたほうがよいと思われます。

* * *

いかがでしたでしょうか。ここで取り上げたフェイクニュースを見極める方法は、改まってクイズにすると簡単かもしれませんが、実際にメディアに触れているときには意外と忘れがちな視点かもしれません。

問題文と挿絵を掲載したクイズ資料はこちらからダウンロードしていただけます。授業や子どもたちとの話のネタにもぜひお使いください。
☆pdf形式はこちら
☆png形式はこちら

4 フェイクニュースに関する参考リンク

How to Spot Fake News – COVID-19 Edition(IFLA)
https://www.ifla.org/publications/node/93015

偽ニュースを見極めるためには(IFLA) ※日本語版
https://www.ifla.org/files/assets/hq/topics/info-society/how_to_spot_fake_news_covid-19_jp.pdf

How To Spot Fake News(IFLA) ※改定前の版
https://www.ifla.org/publications/node/11174

国際図書館連盟(IFLA)、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うインフォデミックを受け、インフォグラフィック「フェイクニュースの見極め方」を改訂(カレントアウェアネス・ポータル)
https://current.ndl.go.jp/node/40803

5 メディアリテラシーについての関連記事

☆「武士の世の中へ」源平の合戦を通してメディア・リテラシーを身につける(佐藤和紀先生)
https://edupedia.jp/article/53233f8e059b682d585b6135
「義経が行ったとされる『鵯越の逆落とし』は可能であったか」というテーマを設定し、資料や新聞記事を複数比較しながら分析的に読むことで、逆落としの可能性について検討する問題解決学習です。著者の立場や著作の表現の違いによって解釈のされ方が違うことに気づき、子どもの批判的思考力やメディアリテラシーを育む実践例です。

☆ニュースの見方を考えよう~メディアリテラシー教育~(三浦尚介先生)
https://edupedia.jp/article/53233f8e059b682d585b60f3
総務省の映像教材「親子で考えようテレビの見方」から「クマ騒動」を報じる3つの架空ニュースを活用した実践例です。子どもたちが複数のニュース番組を比較することで、情報には「作り手」がいること、また「作り手」の意図によって実際の出来事が再構成されていることに気づくことができます。

※「メディアリテラシー」というキーワードの他記事はこちらからご覧いただけます。
https://edupedia.jp/articles/keyword/53233f7d059b682d585b4ba0

6 編集後記

情報そのものを手に入れるだけなら親指を少し動かすだけで済む昨今では、手に入れた情報が信頼できるものかどうかを判断する力がより求められるでしょう。この記事が子どもたちの情報リテラシーをはぐくむ一助になれば幸いです。
(文責:EDUPEDIA編集部 津田)

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