子どもの世界を理解し、味わう~よくみる、わかるということ~

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はじめに

「ちゃんと子どものことみてる?」

小学校・初任のとき、クラスの子どもたちとの関係がうまくいかず、先輩によく言われた言葉です。

学校で子どもがどんな様子で過ごしているか把握しているつもりでしたが、状況が良くならず、何度も同じことを言われました。先輩の真意がよく分かっていなかったのです。

2年目を迎える春休み、教室での様子が詳細に記されている実践記録集をたくさん読み、子どものことが少し分かるようになりました。今までの自分が、いかに自分中心で子どもをみていたか。学習指導要領や指導書の言葉で子どもを指導しようと躍起になり、自分の言葉で子どもをみることが全くできていなかったと振り返りました

2年目からは、子どもの言動だけでなく、ノートに書かれた考えや声にならない想いをよく知ろうと心がけました。「子どもをみる」というのは、目にみえる表面的な言動だけでなく、頭の中や心の動きなど、目に見えないものをみようとすることが大切だったのです。

本記事では、子どもをよくみて、内面世界を理解するための視点やこころがけていることを紹介します。

目次

  1. 目にみえることー言葉(表現)、ノンバーバル
  2. 目にみえないことー人間関係、環境
  3. 生活場面ー家庭、公園、おもちゃ・ゲームコーナー、メディア
  4. 働きかけー知的好奇心、想像力(うそつき)
  5. 無条件の積極的関心(unconditional positive regard)
  6. 関連情報
目次

1 目に見えること

言葉(表現)

授業中の発表やノート、休み時間の世間話などの言葉。また、図工の作品や自由帳の絵など、子どもが表現したものから、授業や学校生活で、子どもたちは何を考えて感じているのかが分かります。ポイントは、子どもが自分を表現する時間をとることです。先生が喋ってばかりでは、その時間は足りないでしょう。

ノンバーバル

しかし、子どもは自分の思いをすべて言葉で表現できるわけではありません。(大人もそうですが)
姿勢や表情、声のトーンからも、子どもの様子がよく分かります。顔は前を向いているけれど、顔がぼーっとしている。発表する時に、声がいつもより小さくなる。顔つきがなんとなく怖くなった。そのような細かい変化から、適切なアプローチを見つけます。また、集中モードに入り学習の世界に浸かっている時は、目つきが変わります。

2 目にみえないこと

人間関係

学校では、先生やクラスメイトなど、多様な人間関係の中で生活しています。誰の隣にいるかで様子が変わることも多々あります。先生によって態度が違うこともあります。誰と関わっている時に生き生きとし、逆に消極的になるのか、人間関係からその子の理解が深まります。

環境

また、場所や空気感といった環境によっても子どもは変わります。運動場など広い場所で伸び伸びできる子や、暗く狭い場所で一人でいる方が落ち着く子など、居心地の良さはさまざまです。

3 生活場面

家庭

子どもの生活空間は大きく家庭と学校だと言えます。先生が子どもの家庭にどこまで介入するかは様々ですが、家庭での様子には、子ども理解のヒントにがあります。
例えば、一人っ子であれば、友達と関わる時間が嬉しい。家で怒られているから、学校では褒めてほしい。お父さんが怖いから男の先生は苦手。家であまりご飯が食べられない場合は、給食の時間が大切。「学校は友達と仲良くするところ」「勉強するところ」と言われますが、子どもが学校で何を大事にしているかも、みえない背景からみえてきます。

公園、おもちゃ・ゲームコーナー

放課後の遊び場といえば公園。私もそうでした。ボールや遊具で遊んだり、ただ走り回っているだけでも楽しそうです。学校では遊ばない子も公園では友達と遊んだり、意外な一面がみれます。

また、デパートなどのおもちゃ・ゲームコーナーは子どもの楽園。子どもを夢中にする仕掛けがたくさんあり、授業の参考になることもしばしば。学校でも、ここにいる時ような生き生きした姿を目指したいです。


(上新電機 狭山イオン店オープン時 写真は東京おもちゃショー2017レポート (Part.2) | 家電Bizより)

メディア

子どもは学校の教科書だけから情報を得ているのではありません。本やテレビ、ゲーム、最近ではタブレットやPCを使って大人と同じ情報を得ることもできます。子どもが普段どんなメディアに接して、どんな情報に接しているかを知ることは、子どもの興味・関心を掴む手助けになります。

また、知識伝達の授業では、塾や参考書などで内容を既に知っている子もいることがあります。そのような子に「もう知ってるし。授業つまんない」と思わせないような工夫が求められています。

4 働きかけ

知的好奇心

子どもの興味を知るために、「休みの日は何してるの?」「どんな本が好き?」いろいろな質問をすることがあります。そこで、共感するだけでなく、その世界を広げることを大切にしています。

例えば、運動が好きなら「この選手はこういう練習をして世界で活躍するようになったみたいだよ」、歴史が好きなら「~~時代の〇〇は教科書にはこう書かれているけど、実際は違うところもあったらしいよ。−−の本や動画で調べていみると、深く分かるかも」など、好奇心を広げ、深められるアドバイスをします。

もちろん、どんな場合もすぐにアドバイスできるわけではないので、家に返って調べて、次の日に「先生も調べたんだけど」と言って伝えることもよくあります。また、いつもアドバイスに惹きつけられることはないので、どんなことに興味を持つのか、試行錯誤で子どもの興味を理解しようとします。

(写真は、アインシュタインの相対論的宇宙| 科学| elmundo.esより)

想像力(うそつき)

こちらからの働きかけは、知的なことだけでなく、想像(うそ)の世界を話すこともあります。よくある例だと、「お月様にはうさぎがいるようにみえるね」「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれるよ!(よく考えたらそう言っている先生も抜かれてしまう)」など。

他には、「先生何歳?」と聞かれて「8000歳くらいだったかなぁ」と答えたりします。「えー!うちのおじいちゃんより歳とってるのに、見た目は若い!」と返ってきます。「先生の家はどこ?」には、「毎日ブラックホールから来てる」と言って図書館の図鑑で説明すると、「一人暮らし?お風呂とかトイレはあるの?」など、興味深々に聞いてくる子もいます。

もちろん発達の段階に応じて「先生、嘘でしょ?」と言う子もいます。想像の世界を話した時にどのような反応を示すかは、子どもの世界を理解するヒントになります。

特別支援級での例

下の写真は私が特別支援級の支援員をしていた時、子どもに書いて見せていた(自慢していた)絵です。子どもと想像(創造)の世界を楽しんでいました。

左上はゾンビマン。ゾンビ映画を見て思い付きました。右上のハンバーガーマンは、子どもに大人気のキャラクターの真似です。子どもたちは、「ゾンビはどこにいるの?学校に来るの?」と聞くので、「ゾンビは夜行性だから昼間はグランドの下で寝てる。夜になったら、運動場で遊んでるよ。」と答えていました。「じゃあ夜に学校に来たら会えるんだね!」と言われたら、「人の前には姿を現さない」と返します。

下の2匹は自分でも何か分かりません。子どもの発想を越えようと必死に書いていました。笑

これは「スーパーマリオメーカー」という、ゲームのステージを自分でつくるゲームが流行っていた時に書いた絵です。(いくつかある中で、不適切な表現ではないものを選びました。汗)
子どもが書いていたので、負けず嫌いの火が付いて私も書きました。「先生すごい、、」と言ってくれたり、子どもの絵もクオリティが高くなったりして、嬉しかったです。

5 無条件の積極的関心(unconditional positive regard)

クライアント中心療法の創始者、カール・ロジャーズの言葉です。彼は、「無条件の積極的関心」「共感的理解」「自己一致」の3つが、カウンセラーにとって重要な態度だと言います。

子どもの世界をよく知るには、「無条件の積極的関心」のように、教師としての期待や望み、評価を一切おいて、子どもの言葉や思考、感じていること、流れる空気を、ありのままに受け入れようとします。ここでは、「みる」だけでなく「きく」「感じる」など、全身をつかってわかります。

子どもの「あたま・こころ・からだ」が発するメッセージを、自分を捨てて、「今・ここ」という時空を共に味わう感覚です。

6 関連情報

([What Is Mindfulness and How Does it Work?] Awake Academy,23 Apr 2015)

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