本を通して希望を届けたい~私がイキイキする表現の時間~(【教育技術×EDUPEDIA】スペシャル・インタビュー第14回  鈴木るりかさん)

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目次

1 はじめに

本記事は、雑誌『教育技術』(小学館)とEDUPEDIAのコラボ企画として行われた、鈴木るりかさんへのインタビューを記事化したものです。

コラボインタビュー第13回は、小学館が主催する「12歳の文学賞」史上初3年連続で大賞を受賞し、この秋連作短編集『さよなら、田中さん』で作家デビューした鈴木るりかさんインタビュー!
“スーパー中学生”として注目が集まる鈴木さんに、作品の面白さや執筆の秘密、学校生活について伺いました。

『小一教育技術』~『小六教育技術』1月号にもインタビュー記事が載っていますので、そちらも合わせてご覧ください。
教育技術.net

2 インタビュー

執筆のきっかけと読書

——自分で本を書こうと思ったきっかけはありますか。

自宅が図書館の隣で、幼い頃からそこに通って本を読んでいました。その頃は、まだ小説というものは大人が書くものだと思っていました。しかし、小学館主催の「12歳の文学賞」を知って、小説は子どもでも書けるのだと分かり、そこから書き始めました。応募しようと思った動機の1つには、賞品の図書カードで「ちゃお」を一生分買いたい、というものもありました。

——小説の発想はどこから生まれるのでしょうか。

自分が体験したり、聞いたり、見たりしたことからひらめくことが多いです。書き始めはそこまで「これを書きたい!」という思いは強くないです。いくつかの日常や出来事がつながって、徐々に物語として出来上がっていくイメージです。

——物語は、頭の中にストーリーがあってすらすら進むのですか。

キャラクターが勝手に動き出していきます。ストーリーが先ではなくて、頭の中でキャラクターが動き出すので、それが物語になります。

——その時に登場人物に感情移入して、自分が悲しくなったり、嬉しくなったりすることはないですか。

それを感じることはあまりありません。自分が描く登場人物のことは、客観的に見ているのだと思います。

新刊について

——デビュー作「さよなら、田中さん」のおすすめポイントはありますか。

短編が5編あるのですが、どの作品も、悲しいけれど、面白い。面白いけど、悲しい。そして、最後には希望を感じられるような作品なので、そこがおすすめのポイントです。

——なぜ悲しみで終わらせたくないのですか。

どんなに絶望的なことがあっても、必ずどこかで光がある、道があると自分が信じているからです。

——本作を、どのような方に読んでもらいたいですか。

老若男女、いろいろな方に読んでいただきたいです。

——5編の中で好きな作品はありますか。

「花も実も」です。分量を長く書けましたし、創作時に頭の中でキャラクターが最も生き生きと動いてくれました。「松坂慶子」という喩えを入れたことを、編集担当の方に褒められたのも嬉しかったです。また、この年で松坂慶子を知っていることに驚かれました。これも、キャラクターが頭の中で話したセリフです。

本の楽しさ

——普段はどのような本を読みますか。

幅広いジャンルを読みます。ミステリーのような物語の仕掛けにも興味がありますし、人の心情を描いている小説も好きです。

今人気の作家さんの本を読むのも好きなのですが、志賀直哉先生など、すでに亡くなっている作家さんの本を読むことが多いです。亡くなった方の作品は、この先絶対に生まれないものなので、作品を愛おしいと感じるのです。読んでいて難しい表現は、自分で調べています。

——本を読むのと書くので、楽しさは違いますか。

私はどちらも同じだと思っています。例えば、色々な本を読んでいたら、「私もこんなふうに書いてみたいな」と思いますし、自分で書いていたら、「他の方はどうやって表現しているんだろう」と思い、他の作品を読んでみたくなったりします。こういう表現の方法もあるんだと『発見』するのが楽しいです。

ただ、やはり物語を読んでいるときよりも書いているときの方が、私が一番イキイキとしていると感じます。実世界とは違う自分の世界を想像して、それを表現することができるからです。

——憧れの作家はいますか。

短編を読むのが好きなので、三浦哲郎先生や吉村昭先生に憧れています。文が美しく、私もそういった文章が書けるようになりたいと思っています。

——これから挑戦したい小説のテーマはありますか。

超能力者ではない普通の人たちが登場する、日常生活を描きながらも感動できる作品を書きたいです。他には、私自身が中学生になったので、中学校を舞台にした作品を書きたいと考えています。

学校生活について

——学校で印象的な先生とのエピソードはありますか。

作中に出てくる木戸先生は小学校の時の先生がモデルなのです。作中ではマイルドに表現しましたが、実際はもっとすごい方でとても印象に残っている先生です。
 例えば、クラス全体で将来の話をしていた時に、「みなさんの夢は、ほとんど叶いません!」と言われたことがあります。みんなびっくりしました。悪気はなく、とても現実的なことを言う先生でした。

その先生は小学校4年生の時に異動してしまったので、先生は作品の中で自分がモデルになっていると知らないと思います。この本を読んで、自分がモデルになっていることに気づいてくれたらいいなと思っています。

——誰かに作品についてアドバイスをもらうことはありますか。

学校の先生に見てもらうことはありませんが、母にはたまに見てもらいます。
(母:言葉の表現などに少し口を出すことがあります。ただ、親が口を出しすぎると、かえってつまらないものになってしまうので、子どもの感性を大切にするために、内容には踏み込みません。)

——先生から言われた印象的な言葉はありますか。

中学の先生から言われた「塩も光もなくてはならない存在。『あなたたちは地の塩、世の光である』と言われているのだから、一人一人自分を大切にしなさい」という言葉です。

他には、先生から言われたわけではないのですが、「必ず道はある。どんな絶望的な状況でも道はあるものだ。」という祖父の言葉も印象に残っています。これを言われたのは小学生の頃で、作品に込められている「最後には希望を感じてもらいたい」という部分にも、この言葉が影響をしていると思います。

この言葉を大切に、辛いことがあっても、その状況を別の視点から面白くみるように心がけています。

——今の教育や先生の役割について、どう思いますか。

友達関係のような先生がいたのですが、私はその関係を先生という風には感じることができませんでした。先生と生徒、という上下の関係はあってほしいと思います。私が小学校低学年の時の先生は、年齢が比較的上の先生ということもあってか、友達のような感覚はなく、尊敬できる先生でした。

先生という職業は子どもから見て尊敬できるものであってほしいですし、そういう関係でありたいと思います。年齢に関係なく、目標に向かって諦めず立ち向かう姿を見せてくれる先生は尊敬できると感じます。自分自身も、何事にも諦めずに立ち向かっていける、尊敬されるような大人になりたいと思います。

3 プロフィール

鈴木るりか(すずき・るりか)

2003年10月17日東京都生まれ。血液型A型。
史上初、小学4年、5年、6年生の時(2013~15)、3年連続で小学館主催『12歳の文学賞』大賞を受賞。小説を書くようになったきっかけは、『12歳の文学賞』の賞品の図書カードで「ちゃお」を一生分買いたかったから。
好きな作家:志賀直哉、吉村昭
好きな科目:国語 
嫌いな科目:数学
好きな音楽:ボカロ
好きな有名人:さまぁ〜ずの三村さん
将来の夢:小説だけでなく、シナリオや漫画にも挑戦したい。
お気に入りスポット:ロイヤルホスト

4 著書紹介

友人とお父さんのほろ苦い交流を描く「いつかどこかで」、お母さんの再婚劇に奔走する花実の姿が切ない「花も実もある」、初受賞作を大幅改稿した「Dランドは遠い」、田中母娘らしい七五三の思い出を綴った「銀杏拾い」、中学受験を子供の目線でみずみずしく描ききった「さよなら、田中さん」。
全5編収録。

5 編集後記

初めての中学生への取材ということで少し緊張しましたが、るりかさんの飾らない受け答えから心地よい雰囲気が生まれました。
 文章だけでなく、何かで自分を表現する「イキイキする時間」が学校の中に増えると良いなと思いました。
 これから、自分の思いや世界を誰かに伝えるというコミュニケーションを楽しみながら過ごしたいです。
(EDUPEDIA編集部 大和信治)

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【教育技術×EDUPEDIAコラボ】スペシャルインタビュー

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