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学級ってそもそも何だろう?『<学級>の歴史学 自明視された空間を疑う』(柳治男)【書籍紹介企画】

1 はじめに

EDUPEDIAでは、教員の方々にスタッフおすすめの書籍の内容を紹介する、書評企画を行うことになりました。
今回は第一弾!紹介するのは、
柳治男(2005)『<学級>の歴史学 自明視された空間を疑う』


先生方にとって避けては通れない課題は「学級づくり」かと思います。
(地域差・小中の差はあると思いますが)なにせ1人で30人以上の子どもたちを見なければなりませんので・・・。学級の雰囲気や決まりごと、目指すところを、学級びらきをする春先に力を入れられているかと思います。
そんな先生におすすめなのが、「学級」を研究として取り上げた本書です。

2 書籍内容 (本書の「はじめに」より引用)

概要

柳治男先生は1941年の生まれで、学校組織を社会学的な観点から研究されてきた方でした。この本はタイトルにもあるように歴史に目を向けて、私たちが現在なんの疑いもなく受け入れている「学級」という仕組みがいつ出来あがったのか、イギリスの公教育制度の始まりに立ち返ってまとめておられます。

いじめ、不登校、「学級崩壊」で議論されないこと

柳先生は、様々な教育問題が学級をどう変えるか(how)ばかりの議論となっていて、「なぜ学級なのか」(why)「学級とはなにか」(what)という議論が行われていないとしています。確かに!『●●でうまくいく学級づくり』っていう類の本はたくさん見かけますが、そういった学級の“そもそも”を問いなおした本・人・議論は聞いたことないですね。

中世の学校に学級はなかった

柳先生は続けて、中世までの学校には学級が存在せず、年齢がまちまちでばらばらだったと述べています。学級は近代が生み出した学校に特有の組織だと。フムフム。江戸時代に日本の庶民の教育を支えた寺子屋も、大きな子から小さな子まで、てんでんばらばらで勉強していましたからね。納得がいきます。

学級論の棚上げは生徒のナマの声を封じる

柳先生はさらに、学級の存在を私たち大人があたりまえのものとしていることで、当の学級で生活している子どもたちの生活や感情を十分に汲み取ることができず、予定調和的な考え方を作り出してしまう、としています。そう考えてみると、不登校の原因も学級の中の問題があることがありますし、学級崩壊も「学級でまとまって教育活動を進める」という前提があるから「問題」になるわけですからね。・・・だんだん引き込まれてきました。

本書の目的

そこで柳先生は「学校にとっての学級制、さらには児童・生徒にとっての『学級』の意味を明らかに」するために、

第1章
日本固有の学級制のあり方を確認する
第2・3・4章
イギリスの義務教育のはじまりに目を向けてみる
第5・6・終章
日本の学級制度がどんな問題点をはらんでいるのか

という議論をしていくと書かれています!

早速読んでみましょう・・・

3 読んでの感想

これは面白い!
学級制度がいかにしてできがあがっていったのか。
それは、モニトリアル・システムが作り上げた能力別分類を年齢別分類に変え、さらに幼児学校の一斉教授方式を採用することによってできた、と。

一斉教授方式はなんとなくわかるけど・・・
モニトリアル・システム?
能力別分類と年齢別分類?

詳しく知りたい方はぜひ、柳治男先生の『<学級>の歴史学 自明視された空間を疑う』を読んでみてください!


もし忙しくて1冊まるごと読むのはちょっと・・・という方は、日本の学級制度の問題点を論じている5章から読んでみるのをオススメします!それだけでもなるほどなぁ、となります。

ぜひ読んでみてくださいね!

4 学級についてもっと知りたい方は、、、

柳治男先生は教育社会学がご専門なのですが、歴史を対象とした教育学の研究は、「学級」をはじめとした「学校のそもそも」を問いなおす研究が積みあがっています。
例えば、

・小学校低学年で子どもたちの手をつながせて、移動の際にどこかにいかないようにする・・・刑務所における囚人たちを「逃がさない方法」がもとになっている。

・遠足・・・明治以降に、集団訓練の意味合いを含めた行軍旅行、日露戦争以降、軍事教練的な意味合いが強まって学校教育に広がる。

などなど、ちょっとゾッとすることが、意外にも学校教育活動の“そもそも”となっていたりします。総じて言うならば、学校は「近代」が生み出したものであるという“ポストモダン”の色彩を帯びた研究群があります。もし興味を持たれた方は
森重雄(1993)『モダンのアンスタンス 教育のアルケオロジー』


※もう絶版になっていますので、古書店やWEB、図書館を使って見つけてみてください!

教育学の研究成果は、知ったからといってふだんの実践には役立ちませんが、まさに柳先生の言うとおり、「自明化」されたものを「疑う」ことで、見えてくる世界がより深くなる力をもっているように思います

5 著者プロフィール

柳治男
教育社会学者。
1941年、福岡県生まれ。
九州大学教育学部卒。九州大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士。
九州大学助手、熊本大学助教授、熊本大学教授を経て退職、教育社会学会所属。

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