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「授業時数」から教師の多忙と日本の義務教育を考える

「世界一多忙」だと言われる日本の先生。事務的な業務に追われ、授業を考える時間がないということをよく耳にしますが、実際に学校の先生はどれだけ授業を行っているのでしょうか。今回の記事では、小学校・中学校の「授業時数」を考えてみます。

「なぜこの教科が多く、これは少ないのだろう」
 「先生は忙しいのだから授業時数を減らしたら良いのではないか」
 「現行の授業バランスは、子どもの成長や学習観にどのような影響を与えるだろうか」
 「世界と比べて、日本の教育にはどのような特徴があるのだろうか」

「授業時数」から、様々な疑問が浮かんできます。皆さまも、ぜひ自分なりの分析を行ってみて下さい。

小学校・中学校、現行の標準授業時数

どちらも文部科学省の資料で、(  )内は週当たりのコマ数です。
  

小学校の先生は毎日、国語と算数(小1除く)の授業をしていることが分かります。次いで多いのが体育で毎週3コマあります。(高学年では2.6)
 この3教科の授業作りがスムーズにいけば、他の教科準備の余裕も生まれるかもしれません。
 ちなみに、小学校1~4年生で国語が週5コマ以上ありますが、これは「図書」や「書写」の時間になる学校が多いのではないでしょうか。

中学校では、いわゆる5教科(国社数理英)がほぼ同じ時数で並んでいます。(週3~4コマ)

「音楽」「美術」「技術・家庭」は週1~2コマとなっており、小学校から学年が上がるにつれて芸術系の授業が少なくなっています。

日本の教育の強みと言われる「道徳」「特別活動」は、小中ともに週1コマとなっています。
 これらの目標は、授業時間だけでなく、教育活動全体を通じて意識されていることも特徴的です。
 道徳は、小学校で平成30年度、中学校で平成31年度から「特別の教科」として位置づけられますが、時数の変更はないとされています。

続いて、上の授業時数を基に編集部が作成した棒グラフと円グラフで、時数と授業の特徴を考えていきましょう。

小学校6年間の全授業時数

小学校は全部で5645時間(実際は1時間あたり45分授業)の授業があるのですね。
国語が1461時間でトップ。2位の算数の約1,4倍、理社の3~4倍です。小学校では特に国語に力を入れていることが分かります。

最も少ない外国語活動は70時間、5、6年生の週1コマです。
 ちなみに、次期指導要領では、高学年で「読むこと」「書くこと」を含めて中学校以上と同様の教科「外国語」となり、時数は週2コマ、年間70時間になります。
 従来の「外国語活動」は中学年に前倒しとなり、3,4年生では週1コマ、年間35時間の増加です。
つまり、小学3~6年生では年間35時間が増えることになります。
 他の教科等の時数は変更なし。

この外国語の時数増加については、限度と言われている「週28コマ(中学校は29コマ)」(平成20年1月中央教育審議会)を超えることになりますが、どのように実施されるのでしょうか。

円グラフでは各教科等のパーセンテージが分かります。
トップの国語は、小学校授業の1/4。約1/5の算数と合わせると、44%。2教科で小学校の全授業の約半分になります。国算が得意な子は授業が楽しく、苦手な子にとっては少し辛い時間バランスかもしれません。

理科、社会、音楽、図工は横並びですね。

家庭科は2%で、小学校では衣食住・家族・消費などについて授業で考える時間が少ないようです。
 でも、小学校の思い出に調理実習を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。時数の少なさと思い出の強さの不思議な関係ですね。

外国語活動は、なんと1%。中学校ではどうなるでしょうか。

小学校1年生

「小1ギャップ」と言われる小学校1年生の時数をみてみましょう。
国語が全授業の1/3です。文字の読み書きが苦手な子にとっては、なかなか厳しい時間割かもしれません。

幼稚園の「生命及び自然に対する興味」や「豊かな感性と表現力」といった目標(学校教育基本法 第二十三条)を引き継ぐことを考えると、図工や音楽だけでなく、国語や算数の授業をそのような視点で計画することが大切になるように感じますが、実際には難しそうです。

中学校の全授業時数

続いて中学校です。
最も特徴的なのは外国語。小学校では断トツだった国語を超えています。小学校から中学校に上がる際の大きな変化は「教科担当制」「部活動」「英語の授業」とよく言われますよね。

また、小学校では理科・社会と同じくらいだった音楽・美術の時間が週1コマ、全115時間になっています。「豊かな情操を養う」ことを目標とするこの2教科の他に、中学生が感性や情操を養う機会はどこにあるでしょうか。

小学校で全体の1%だった外国語が14%でトップに!中学校では英語の授業が一番多いのですね。

五教科は大きな差はないようです。外国語を1コマ社会に渡して、五つとも385時間で合わせないのは何か理由があるのでしょうか。

小学校で2%だった家庭科は6%に。
しかし、中学校では「情報・家庭」となっているため実際は半分の約3%と考えられます。「思春期と食生活」や「恋愛と家族」など、中学生だからこそ考えたいテーマについて授業で扱う時間は少ないようです。
日本の中学生はこのようなテーマについて、どこから情報を得て、誰と対話して考えを深めているのでしょうか。

また、2020年から小学校でもプログラミング教育が必修化されますが、中学校での情報の授業も約3%。
小学校で育まれたプログラミング的思考が、中学校の教育活動全体に生かされるよう、情報科に期待が寄せられるでしょう。

小学校・中学校の合計

次は、小学校・中学校の合計時数です。
ここでも国語がトップとなりました。義務教育で授業時数が一番多いのは、国語なのですね。2位が算数・数学。そして3位は、意外かもしれませんが体育

体育が目指す「たくましく生きるための健康や体力」は生きる力の3要素の1つです。体育では、生涯スポーツの視点から体を動かす喜びや安全の学習も大事にされています。

外国語は中学校ではトップでしたが、小学校と合わせると音楽や美術と同じくらいです。芸術系に比べて英語の方がたくさん勉強した記憶があるのは、試験や入試のためでしょうか。

上のグラフは全時数における小学校と中学校の時間が示されたものです。

中学校で外国語が大きく増えています。これは大きなギャップになりそうです。

理科・社会は小中であまり時数は変わっていません。

小中9年間を合わせて、どの教科も小学校での国語の授業数(1461時間)を超えていません。
また、国語を除けば、どの教科も小学校の算数の時数(1011時間)も超えていません。

小学校の国・算の時数の多さが目立ちます。
 仮に、子どもの学習観の大部分は小学校の国語と算数の時間に形成されていると考えると、そこでの授業の重要性を強く感じます。

国語と算数・数学の2教科で、小中の全授業の37%を占めています。コミュニケーションと論理的思考力の重要性が伺えます。
 ただし、「学校の国語の授業で身に付けた力が曖昧だ」ということもよく耳にします。言語活動の中核を成す国語の授業で、育成される力とその評価方法をよく考えることは、他教科の学習を効果的にすることに繋がるでしょう。

各教科等の考え方を総合的に活用して課題解決や問いの探求を目指す総合的な学習の時間は5%。この限られた時間で学習を統合することは現実的に難しいように感じます。
 そこで、総合の時間だけではなく、各教科等の学び(考え方や学習スキル)を横断的に広げ、深めていけるような授業・カリキュラムのデザインが必要になるでしょう。
 この視点において、担任制の小学校では様々な授業での試行錯誤がしやすく、各教科の専門家が集まる中学校では、協働による深みが生まれやすいと考えられます。

小学校低学年の生活を除けば、技術・家庭が最も低い3%
情報教育、家族や子育て、食育、消費者教育など、生きることに直結するテーマが多い教科ですが、なぜ時数が少ないのでしょう。下のグラフにあるように、中学校で技術・家庭の免許を持つ先生が少ないことが原因かもしれません。

(教員の資質能力向上 特別部会(第11回)配付資料「教員の資質能力の総合的な向上方策に関する参考資料」より)

時間割にしてみたら、、

最後に、授業時数のイメージが湧くように、全授業の割合で1週間の時間割を作ってみました。

小学校6年間


国語1時間と外国語0.3時間はモジュールで取っています。
小学校に入る前にこの時間割を見せられたら、どんな気持ちになるでしょう。

中学校3年間

高校受験の「主要5教科」が前面に出ていますね。
小学校中学年の頃にこの時間割を見せたら、学習の姿勢はどう変わるでしょうか。
自分で英語の勉強をしたり、逆に中学校に行きたくないと思ったり、いろいろな反応が出そうです。

おわりに

今回は日本の小中の授業時数をみてきました。
下のような特徴がみられました。

  • 小学校での国語、算数の多さ
  • 道徳、特別活動の少なさと効果
  • 総合的な学習の時間、家庭(技術)の少なさ
  • 中学で外国語が増え、芸術系が減る

実現可能性は分かりませんが、小学校の国語と算数の時数を減らすことが先生の忙しさの軽減に繋がるのではないか、と考えました。
 また、授業時数は社会の要請や大学の学部状況など、様々な要因が関係しているのではないか、と考えることもできました。

世界の教育と比べたり、他のデータと照らして考えてみると、新しい発見があるかもしれません。

関連資料

諸外国における教育課程の基準-近年の動向を踏まえて-|国立教育政策研究所、平成25年(2013年)3月

諸外国における各教科等の種類と授業時数等(Ⅰ部)、教育課程の基準の概要(Ⅱ部)についての報告書です。Ⅲ部では、研究のまとめが表にまとめられています。

TALIS(OECD国際教員指導環境調査):文部科学省

OECD国際教員指導環境調査(TALIS):国立教育政策研究所

TALIS(Teaching and Learning International Survey:国際教員指導環境調査)とは、学校の学習環境と教員の勤務環境に焦点を当てた、OECDの国際調査です。

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