「生きる力」を身につける、習得サイクルと探究サイクル

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目次

1 はじめに

 現行学習指導要領で求められる「生きる力」。それに付随して「基礎的・基本的な知識・技能」や「思考力・判断力・表現力」といった能力、「習得・活用・探究」で表現されるプロセスなど、数々のキーワードが提示されています。一見理解することは容易でも、この抽象的な表現から実践に移すにはいくつかのポイントを押さえることが必要です。今回は文部科学省の見解に沿って、そのポイントを確認していきます。

2 「習得・活用・探究」は能力を身に着けるための型

中央教育審議会答申(平成20年1月)において「習得・活用・探究」という考え方が示されました。これらは、「基礎的・基本的な知識・技能」及び「思考力・判断力・表現力」を子どもに身に着けさせるためのものです。この「習得・活用・探究」の流れの考え方について、5つのポイントが挙げられます。

1. 「基礎的・基本的な知識・技能」及び「思考力・判断力・表現力等」は子どもに身に付けさせるもの、「習得・活用・探究」はそのための学習活動の流れを示したものである。

2.
【各教科】
基礎的・基本的な知識・技能を「習得」するとともに、それぞれの教科の知識・技能を「活用」する学習活動を行う。
例えば、、
・観察・実験をしてその結果をもとにレポートを作成する。
・文章や資料を読んだ上で知識や経験に照らして自分の考えをまとめて論述す
といったことが挙げられる 
 ↓↑
【総合的な学習の時間】
各教科における「習得」「活用」を、教科等を横断した問題解決的な学習や「探究」活動へと発展させる。

3.これらの学習活動は相互に関連し合っており、截然と分類されるものではない。

4.各教科での「習得」や「活用」、総合的な学習の時間を中心とした「探究」は決して一つの方向で進むだけではない(「習得→活用→探究」の一方通行ではない)。

5.論理や思考等の基盤である言語の果たす役割を踏まえ,これらの学習の基盤となるのは言語に関する能力であり、そのために各教科等で言語活動を充実させる。

これらのポイントについて押さえた学習の詳細について次の項目から解説していきます。

3 学習活動で身に着ける能力(基礎的・基本的な知識・技能、思考力・判断力・表現力)とは

「習得・活用・探究」を通じて身に着ける能力、「基礎的・基本的な知識・技能」「思考力・判断力・表現力」とはどのような能力なのでしょうか。

育成すべき学力の3つの要素

育成するべき学力の重要な3つの要素として、生きる力(=確かな学力、豊かな心、健やかな体といった、知・徳・体のバランスがとれた力)の育成を目指す現行学習指導要領において、挙げられています。
* 基礎的な知識・技能をしっかりと身に着けさせる。
* 知識・技能を活用し、自ら考え。判断し、表現する力を育む。
* 学習に取り組む意欲を養う。

学習指導要領改訂のポイントを押さえた指導

文部科学省は、学習指導要領改訂に伴い、基礎的・基本的な知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成のポイントを示しています。

基礎的・基本的な知識・技能の習得

  • 指導内容の増加は、社会的自立の観点から必要な知識・技能や学年間で反復することが効果的な知識・技能等に限ることが適当。
  • 「読み・書き・計算」などの基礎的・基本的な知識・技能は、例えば、小学校低・中学年では、体験的な理解や繰り返し学習を重視するなど、発達の段階に応じて徹底して習得させ、学習の基盤を構築していくことが大切。
  • 重点的な指導や繰り返し学習といった指導の工夫や充実に努めることが求められる事項の例を「重点指導事項例」として文部科学省が提示することが考えられる。

思考力・判断力・表現力等の育成

  • 思考力・判断力・表現力をはぐくむためには、観察・実験、レポートの作成、論述など知識・技能を活用する学習活動を発達の段階に応じて充実させる必要がある。
  • これらの能力の基盤となるのは言語の能力であり、その育成のために、小学校低・中学年の国語科において音読・暗唱、漢字の読み書きなど基本的な力を定着させた上で、 各教科等において、記録、要約、説明、論述といった学習活動に取り組む必要。
  • その際、子どもたちの思考力等も発達の段階に応じて 高まることを重視する必要がある。

4 学習活動「習得・活用・探究」の関連とその工程

「基礎的・基本的な知識・技能の習得」とこれらを活用する「思考力・判断力・表現力等」をいわば車の両輪として相互に関連させながら伸ばしていくとともに,学習意欲の向上を図るという改訂の趣旨を反映し,学習指導と学習評価の一体化を更に進めていくことが求められます。

相互に関連させて伸ばす

「ゆとり」か「詰め込み」かではなく、基礎的・基本的な知識・技能の習得と、思考力・判断力・表現力等の育成との両方を相互に関連させるが必要となります。以下にそれぞれの力の育成の方法例を示します。

基礎的・基本的な知識・技能の習得の重視

  • 社会の変化や科学技術の進展などに伴い、子どもたちに指導することが必要な知識・技能について、しっかりと教える。
  • つまずきやすい内容の習得を図るための繰り返し学習を行う。

思考力・判断力・表現力等の育成の重視

  • 各教科などの指導の中で、観察・実験やレポートの作成など、知識・技能を活用する学習活動を充実する。
  • 教科等を横断した課題解決的な学習や探究的な活動を充実する。

それぞれの力をバランスよく伸ばしていくために、強化などの授業時数の増加や教育内容の改善が必要になってきます。

5 参考資料

中央教育審議会教育課程部会「審議のまとめ」パンフレット(教員向け)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/pamphlet/__icsFiles/afieldfile/2010/09/08/1234786_3.pdf

学習指導要領「生きる力」Q&A
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/qa/01.htm

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