Facebookを活用したキャリア教育(埼玉県越谷市立大袋中学校)

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目次

1 【記事概要】

本記事ではコンソーシアム構想を掲げ、積極的に情報発信を行うことで、個人、大学を始めとした各学校・教育機関、各種企業、第三者機関やNPO、各法人など幅広い団体と連携している越谷市立大袋中学校の事例を紹介します。また、「キャリア教育優良学校文部科学大臣表彰」を受賞した「Facebookを活用したキャリア教育」の実践を取り上げます。記事作成にあたり、越谷市立大袋中学校の校長先生にお話を伺いました。

2 【学校の情報公開】

越谷市立大袋中学校では、HP( http://kashinfu.yp23.net/hp/)やTwitter( https://twitter.com/ochu_kashinfu/)、Facebook( http://www.facebook.com/obukuro.jh)を活用し、積極的に学校の情報を公開しています。具体的には、授業や学校行事の風景、緊急情報などを発信しています。

一般に公立学校は広報に積極的ではありません。しかし、現在の学校が抱える課題に取り組むためには、外部の団体と連携することが求められます。そのため外部の人に対して、その学校がどんなことをしているのかを様々な手段を使って、知ってもらう必要があります。学校のことを知ってもらうことからつながりが生まれ、そのつながりが広まっていきます。大袋中学校のコンソーシアム構想も、最初は1つのつながりから生まれました。


 越谷市立大袋中学校Facebookページ

3 【コンソーシアム構想「つどい」】

・コンソーシアムとは

コンソーシアム(英語: Consortium)は、2つ以上の個人、企業、団体、政府(あるいはこれらの任意の組合せ)から成る団体であり、共同で何らかの目的に沿った活動を行ったり、共通の目標に向かってリソースをプールしたりする目的で結成される。(Wikipediaより引用)

・なぜコンソーシアムか—ボランティア応援団からwin-win の共同事業体への発想—

今、学校は多様な課題への取り組みを迫られています。企業間、大学間では既に連携が盛んに行われていますが、学校教育においても、「生徒により豊かな教育を」という共通目標を掲げることで、連携を展開できるはずです。その連携は、単にボランティア的発想ではなく、共に得るものがある係わり方でなければなりません。

・大袋中コンソーシアム「つどい」とは

大袋中コンソーシアム「つどい」は、事務局と「つどい」の趣旨に賛同していただいている個人、大学をはじめとした各学校・教育機関、各種企業、第三者機関やNPO、各法人と幅広い団体の支援者で構成されています。事務局は、コーディネータ1名、新旧PTA2名(H22,23年)に中心となって活動していただいています。

これらの支援者と一同に何かを行うのでなく、それぞれ得意とする分野で幅広く関わっていだいています。その活動は以下の4つのカテゴリーに大きく分類されます。

  1. 授業等の工夫・改善サポート
  2. 安心安全な環境づくり・健全育成
  3. コミュニケーション・人間関係調整力の向上
  4. 学校のよさの積極的・多様な情報発信


コンソーシアムつどい「大袋中学校ブログ形式公式ホームページより引用」
http://kashinfu.yp23.net/hp/?page_id=173

【Facebookを活用したキャリア教育】

・概要

コンソーシアム「つどい」事業の1つとして、大袋中学校ではFacebookを活用し、27職種ののべ92名の社会人の職業経験を聞く、キャリア教育を行なっています。本キャリア教育が導入される以前は、「職業人を学校に呼んで話を聞く」といったことを学校現場では繰り返し行なってきました。もちろん、従来の活動にも意義はありますが、紹介できる職業人が限られてしまうことが課題でした。ICTがこれだけ進歩したのであれば、多くの方々と生徒とのやりとりがFacebook上で可能と考え、導入に至りました。

Facebookのこのシステムは、コンソーシアム事業でつながりがあった文教大学教育研究所と、WEBサービスの提供を行う株式会社ガイアックス( http://www.gaiax.co.jp/jp/)の協力によって作られました。通常のFacebookのシステムでは、グループの中にさらにグループを作ることはできませんが、同社のアプリによって、27職種に分けることが可能になりました。

大袋中学校Facebook内のキャリア教育ページです。

・導入までの流れ

協力してもらう社会人は、校長先生や教職員のつながりを利用しました。協力してもらいたい人にFacebookのメッセージで協力依頼を送り、趣旨を説明します。またサイト上で協力者の募集を行なっています。趣旨に賛同してもらった人に対して、グループのURLを送ります。最初 の設問だけ設定し、1.氏名、2.職業、3.仕事のやりがいと苦労することを投稿してもらうように依頼しますが、その後は打ち合わせをしていません。

交流には文教大学から提供された20台のiPadを利用しています。学校のインターネット回線では、FacebookなどのSNSにアクセスすることはできないため、WiMAX端末2台を独自に契約して利用します。

・授業の展開

2012年の9月頃から1、2年生は特別活動と総合的な学習の時間を、3年生は社会科公民分野の「職業」の時間を使って行いました。

教員用のアカウントを3つ作成し、そのアカウントからグループページにログインし、質問を投稿します。授業では3、4人のグループで1台のiPadを利用します。社会人への質問をグループページに投稿する前には、専用のワークシートを使って質問を考え、先生から承認をもらいます。社会人は投稿された質問を見て、次回の授業までに回答します。社会人の方も生徒の質問に大変熱心に回答しています。

また、Facebook以外からも学習内容を確認できるようにするため、電子書籍作成ツールを使い、iPadを利用して生徒と社会人とのやりとりを閲覧できるようにしました。

以下は電子書籍化されたものです。

・導入の効果

最初のうちは、仕事に関する質問が主でしたが、質問を重ねていくうちに、学習に関する質問へとシフトしていきました。社会人の方も、現在中学校で取り組む学習が、将来どんなところで役に立つのかをしっかりと伝えてくれたので、生徒の学習意欲も向上しました。

また、協力してくれている人が学習発表会などを見学に訪れ、生徒たちとのリアルの場での交流も生まれています。

【編集後記】

公立学校には多くの制約があるため、新しいことに挑戦することが難しいかもしれません。しかし、公立学校においても工夫することで、生徒の学びを高めることは可能です。そのことを大西校長先生の姿勢から学ばせて頂きました。 
 戦略的に学校の情報を発信し、協力者を巻き込みWin-Winの関係を構築することが、これからの学校経営には求められるのでしょう。
(編集・文責:EDUPIEDIA編集部 下村太郎)

【学校プロフィール】

・越谷市立大袋中学校

HP( http://kashinfu.yp23.net/hp/
Facebook( http://www.facebook.com/obukuro.jh
Twitter( https://twitter.com/ochu_kashinfu/

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